次世代型スーパーカーその真価を探る
Text:石川 芳雄 Photo:日産自動車株式会社
東京モーターショーでついにデビューを果たしたニッサンGT-Rの真価を探るため、アウトバーンのあるドイツへと飛んだ。
国産車初のオーバー300km/hカーとなるGT-Rは、その高性能を誰でも、どんなシチュエーションでも引き出せるニュータイプのスーパーカーを目指して開発されたという。速度無制限のアウト バーンはそれを体験するのに格好のステージというわけだ。
はやる心を抑えてランプウェイを丁寧に加速。本線に入り130km/h規制が解けたところでアクセルオン。即座にシートに身体がめり込む強烈な加速が 始まった。
専用開発のVR38DETTは、プラズマコーティングボアの採用によるライナーレス構造で冷却性能を向上させ耐ノッキング性を高め、IHI製の2基の ターボで過給することにより480psを実現。最大トルクは3200~5200rpmの間で60kg-mを発生する。レブリミットは7000rpmだが、そこまでの盛り上がりはあっという間。アクセルレスポンスも抜群で、軽い踏み込みに対してもクルマが前へ前へ出ようとする獰猛さは、同時に乗った911 ターボよりも強烈だ。
0~100km/h加速に要する時間はわずか3.6秒で、これは911ターボを凌ぐ。しかも単に速いだけでなく、どこからアクセルを踏んでもツキが良 い、密度の高いトルク感がこのエンジンの魅力である。
ミッションはボルグワーナー製のツインクラッチを使った2ペダルAMT。もちろん自動シフトのオートモードでイージードライブも可能だが、楽しいのはやはりステアリングコラムの左右に固定されたパドルによるマニュアルシフト。スタートの瞬間、駆動系にコキッとした衝撃が伝わりクラッチがつながるが、そこから先のシフトアップはほとんどタイムラグがなく瞬時に完了する。
センターコンソール上のセットアップスイッチでRモードを選択した時のシフトレスポンスは、0.2秒という素早さ。多少のスムーズさよりもダイレクトさを重視したモードゆえ多少のシフトショックは出るが、7000rpmまで瞬時に到達する強力なパワーを、このレスポンスの良いシフトで味わうのはかなりの快感だ。
それにしても驚くのは、200km/hを越えた領域での安定感である。フロントに置かれたエンジンと、リヤアクスル上のミッションをカーボン製のプロペラシャフトでつなぎ、フロントに向けたアウトプットから再び違うシャフトを介して前輪にトルクを伝えるという凝りに凝った独立型トランスアクスル4WDの恩恵なのか、ややウエット気味で路面もそこそこ荒れたアウトバーンをこの速度で走っても緊張感が高まり過ぎることがない。
直進安定性は常にピシッとしているし、ライントレース性も抜群で、GT-Rに対する絶対的な信頼感が湧いてくる。
ただし、道路環境は厳しかった。交通量がけっこうあり、トラックなども混走するため、追い越し車線に出てくるクルマが多い。ここで300km/hを試すの は、いかに380mmのディスクローターにブレンボ製モノブロック対向6ポッドキャリパー(フロント)で強力なストッピングパワーを得ているGT-Rと言えど も蛮行である。
それでも空いたところでチャンジしてみたが280km/h手前が精一杯。しかしこの領域でも前に述べたクルマ自体の安心感は変わらなかった。ポルシェ は明確にフロントのリフトを感じて不安になるし、他のドイツ製ハイパフォーマンスモデルでもここまでの安定性を持つクルマは稀だ。その意味でGT-Rの 目指したニュータイプのスーパーカーというコンセプトは、かなりのレベルで達成されていると言っていいだろう。





ただし、限界域の操縦性など、そのポテンシャルの全てを公道レベルで引き出すのは不可能だ。カントリーロードでコーナリングも試したが限界はなかなか見えない。パフォーマンスをフルに味わうにはサーキットでなければ無理だろう。ただ、そんな中でもひとつだけわったのは、挙動が4WDよりFRに近いこと。フロントタイヤに引っ張られる感じでラインに上手く乗せることのできるGT-Rだが、パワーオンで腰のあたりに駆動力を感じるその乗り味は、まさにFRらしい素直なものだ。
そしてさらに、GT-Rは乗り心地などのコンフォート面も想像以上に良かった。センターコンソールのセットアップスイッチでショックアブソーバーをR モードに入れるとさすがにやや角の立った硬さとなるが、これだけの性能を備えるスーパーカーとしては乗り心地も望外に良い。いやはや、大変な高性能車が 日本に登場したものだ。

